松山地方裁判所 昭和31年(行)6号 判決
松山市大街道二丁目十二番地
原告
ラヂウム温泉株式会社
右代表者代表取締役
森岡品吉
右訴訟代理人弁護士
泉田一
松山市堀之内
被告
松山税務署長
武田兼一
右指定訴訟代理人法務大臣所部職員
越智伝
入谷幹三郎
菊地義夫
越智富市
右同
被告所部職員 武智楢碩
塩田泉
上原忠義
右当事者間の昭和三十一年(行)第六号法人税更正決定取消請求事件につき当裁判所は左の通り判決する。
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
原告訴訟代理人は「被告が原告の昭和二十八、二十九各事業年度所得確定申告に対し昭和三十年七月二十九日更正決定した原告の昭和二十八事業年度所得金額七十九万四千百円を三十五万七千六百円に、昭和二十九事業年度所得金額七十二万八百円を三十四万二千八百円と夫々これを変更する。訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求めその請求原因として「原告は肩書地に於て温泉薬湯及び売店貸席等を営業目的とする法人であるが昭和二十九年五月三十一日昭和二十八事業年度(同年四月一日以降昭和二十九年三月三十一日まで)所得につき、昭和三十年五月三十一日昭和二十九事業年度(同年四月一日から昭和三十年三月三十一日まで)所得につきそれぞれ被告に確定申告をしたところこれに対し被告は右申告に於ける地代家賃収入の計上に脱漏があり原告の昭和二十八事業年度地代家賃収入を金五十八万二千円、昭和二十九事業年度地代家賃収入を金八十二万八千円と認定し、その他税法上の加除をして昭和三十年七月二十九日決定により原告の昭和二十八事業年度所得金額を金七十九万四千百円、昭和二十九事業年度所得金額を金七十二万八百円と夫々更正しその旨原告に通知して来た。しかし、被告のした前記地代家賃収入の認定は事実に反する。即ち、原告の地代家賃収入は昭和二十八事業年度金十四万五千五百円、昭和二十九事業年度金四十五万円に過ぎない。従つて被告が前記更正に際して認定した原告の地代家賃収入金額中右金額を超過する金額昭和二十八事業年度金四十三万六千五百円、昭和二十九事業年度金三十七万八千円は前記被告の更正に係る右各事業年度所得金額から控除されるべきであり、結局原告の昭和二十八事業年度所得金額は金三十五万七千六百円、昭和二十九事業年度所得金額は金三十四万二千八百円が正当であつて、右金額を超える被告の更正した部分は違法であるから右正当金額に変更を求めるため本訴に及んだ次第である」と述べ、被告の主張に対し「原告がその所有に係る被告主張のような宅地の一部とバラツク建店舗二棟を被告主張のように訴外千葉質外一名及び同西村賢治に賃貸して現在に至つていることは認めるが同訴外人等からの地代家賃収入の点は否認する。原告は右地代家賃として千葉質外一名より昭和二十八年六、七月は各月金二千円、同年八月から十二月までは各月金五千円、昭和二十九年一月から十二月までは各月金一万五千円、昭和三十年一月から三月までは各月金三万円を、西村賢治より昭和二十八年七月金千五百円、同年八月から十二月までは各月金五千円、昭和二十九年一月から十二月までは各月金一万五千円、昭和三十年一月から三月までは各月金三万円をそれぞれ収入したに過ぎず、従つて原告の同訴外人等からの地代家賃収入は昭和二十八事業年度合計金十四万五千五百円、昭和二十九事業年度合計金四十五万円である」と述べ、立証として甲第一乃至第四号証、第五号証の一、二、第六号証の一乃至五、第七号証の一乃至十一、第八号証の一乃至六を提出し、証人西村賢治、同千葉質、同坂本治俊、同森岡イワ代、同西山トミ子(第二回)の各証言並びに原告代表者森岡品吉本人尋問(第一、二回)及び検証の各結果を援用し「乙第一、第二号証、第七乃至第十二号証、第十五、第十六号証、第二十四号証の一、二、第二十五号証及び第十三、十四号証中市長証明部分はいずれもその成立を認めるが第十三、十四号証のその余の部分及びその余の乙号証はいずれも不知」と述べた。
被告指定代理人等は主文同旨の判決を求め答弁として「原告がその主張のような法人であること、原告がその主張の日昭和二十八、二十九各事業年度所得につき被告に対し確定申告をしたこと、これに対し被告が原告主張のような理由により更正決定をしてその旨原告に通知したことはいずれもこれを認めるがその余の事実は否認する」と述べ、主張として「原告の地代家賃収入に関する被告の認定は正当である。即ち、原告はその所有に係る肩書地にある宅地の一部とその地上にあるバラツク建店舗二棟を、うち向つて右側の一棟(建坪四坪六合五勺)は昭和二十八年六月一日以降訴外千葉質外一名に、向つて左側の一棟(建坪五坪四合五勺)は同年七月一日以降訴外西村賢治にそれぞれ賃貸して現在に至つているものでその地代家賃として千葉質外一名より昭和二十八年六、七月は各月金三万円、同年八月から十二月までは各月金三万三千円、昭和二十九年一月から昭和三十年三月までは各月金三万六千円を、西村賢治より昭和二十八年八月から十二月までは各月金三万円、昭和二十九年一月から昭和三十年三月までは各月金三万三千円をそれぞれ収入し従つて原告の右訴外人等からの地代家賃収入は昭和二十八事業年度(同年六月分から昭和二十九年三月分まで)合計金五十八万二千円、昭和二十九事業年度(同年四月分から昭和三十年三月分まで)合計金八十二万八千円である。右地代家賃収入にその他税法上の加除をして決定した被告更正は何等違法でない」と述べ、立証として乙第一乃至第四号証、第五号証の一、二、第六号証の一乃至三、第七乃至第十六号証、第十七号証の一、二、第十八号証の一乃至三、第十九乃至第二十一号証、第二十二号証の一、二、第二十三号証、第二十四号証の一、二、第二十五号証、第二十六号証の一乃至三、第二十七号証、第二十八号証の一、二、第二十九号証を提出し、証人西山トミ子(第一回)、同西村賢治(第一、二回)、同千葉質、同宮田泰、同井手歳雄、同檜垣早美(第一、二回)、同武智楢碩(第一、二回)、同田中稔、同山本俊雄の各証言及び検証の結果を援用し「甲第一、第二号証、第五号証の一、二、第六号証の一乃至五、第七号証の一乃至十一、第八号証の一乃至六はいずれもその成立を認めるが甲第三、第四号証は不知、甲第五号証の一、二、は利益に援用する」と述べた。
当裁判所は職権で証人森岡イワ代を尋問した。
理由
原告が肩書地に於て温泉薬湯及び売店貸席等を営業目的とする法人であること、原告が昭和二十九年五月三十一日昭和二十八事業年度(同年四月一日以降昭和二十九年三月三十一日まで)所得につき昭和三十年五月三十一日昭和二十九事業年度(同年四月一日以降昭和三十年三月三十一日まで)所得につきそれぞれ被告に確定申告をしたこと、これに対し被告は右申告に於ける地代家賃収入の計上に脱漏があり、原告の昭和二十八事業年度地代家賃収入を金五十八万二千円、昭和二十九事業年度地代家賃収入を金八十二万八千円と認定し、その他税法上の加除をして昭和三十年七月二十九日決定により原告の昭和二十八事業年度所得金額を金七十九万四千百円、昭和二十九事業年度所得金額を金七十二万八百円とそれぞれ更正しその旨原告に通知したこと、原告がその所有に係る肩書地にある宅地の一部とその地上にあるバラツク建店舗二棟を、うち向つて右側の一棟(建坪四坪六合五勺)は昭和二十八年六月一日以降訴外千葉質外一名に、向つて左側の一棟(建坪五坪四合五勺)は同年七月一日以降訴外西村賢治にそれぞれ賃貸して現在に至つていることはいづれも当事者間に争がない。
そこで原告が右訴外人等から得た地代家賃収入の金額について判断するに、証人井手歳雄の証言により真正に成立したものと認められる乙第三号証、証人檜垣早美の証言(第一回)により真正に成立したものと認められる乙第四号証、証人宮田泰の証言により真正に成立したものと認められる乙第五号証の一、前記井手歳雄及び宮田泰の証言により真正に成立したものと認められる第六号証の一乃至三、証人山本俊雄の証言により真正に成立したものと認められる乙第十八号証の一、証人檜垣早美の証言(第二回)により真正に成立したものと認められる乙第十九号証に右証人井手歳雄、同檜垣早美(第一、二回)同宮田泰、同山本俊雄の各証言及び検証の結果を綜合すると原告は前記訴外人等に前記宅地家屋を賃貸後その地代家賃として、千葉質外一名より昭和二十八年六月より同年十二月まで一日当り金千百円、一箇月三十日計算で月金三万三千円宛、昭和二十九年中及び昭和三十年三月まで一日当り千二百円一箇月三十日計算で月金三万六千円宛を、また西村賢治より昭和二十八年八月より同年十二月まで一日当り金千円一箇月三十日計算で月金三万円宛、昭和二十九年一月から昭和三十年三月まで一日当り金千百円一箇月三十日計算で月金三万三千円宛を収入した事実が推認できる。しかるに原告は右地代家賃として千葉質外一名より昭和二十八年六、七月は各月金二千円、同年八月から十二月までは各月金五千円、昭和二十九年一月から十二月までは各月金一万五千円、昭和三十年一月から三月までは各月金三万円を、また西村賢治より昭和二十八年七月は金千五百円、同年八月から十二月までは各月金五千円、昭和二十九年一月から十二月までは各月金一万五千円、昭和三十年一月から三月までは各月金三万円をそれぞれ収入したに過ぎないと主張し、証人西村賢治の証言(第一回)により真正に成立したものと認められる甲第三号証、同千葉質の証言により真正に成立したものと認められる甲第四号証成立に争のない甲第六号証の一乃至五、第七号証の一乃至八、第八号証の一乃至五、証人西山トミ子の証言並びに原告代表者本人尋問(第一、二回)の結果に前記証人西村賢治(第一、二回)同千葉質の各証言には右主張に副うものがあるけれども、前掲各証拠及び成立に争のない乙第七乃至第十二号証、同第十五号証、証人武智楢碩(第一回)の証言に照らして容易に信用できないし他に原告主張事実を認めて前段認定を覆するに足る証拠はない。
そうだとすると原告の右訴外人等からの地代家賃収入は昭和二十八事業年度(同年六月分から昭和二十九年三月分まで)合計金五十八万二千円以上、昭和二十九事業年度(同年四月分から昭和三十年三月分まで)合計金八十二万八千円であること計算上明かである。右地代家賃収入にその他税法上の加除をして決定した前記被告更正には原告の主張するような違法な点はなく、他に違法とすべき資料もない。原告の請求は失当であつて棄却を免れない。
そこで訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り判決する。
(裁判長裁判官 矢野伊吉 裁判官 加藤竜雄 裁判官 篠原幾馬)